M.I.F.代表インタビュー
―――開催をはじめたきっかけは?
私たちが一番最初に作った映画は、単独で上映会をやったんですが、その時に「自分が住んでる街が映画の舞台になってるとうれしい」という感想をもらったんです。そう言われれば、映画やテレビで舞台になるのは名古屋までで、なかなか豊田などは舞台になりません。「これは、自主映画でもお客さんを呼べるかもしれない」と思いました。
さらに、探してみると豊田・三河で映画製作をしている人が予想以上にいた。全然知らなかったんですけどね、自分たちだけだと思ってたから。さらに、みんな作った映画を上映してみたいけど、自分たちだけじゃやれないって思ってると聞いて、それじゃあ地元製作の自主映画を集めて上映する映画祭をやろうという発想になったんです。
―――開催方法は最初からコンセプトが一貫しているようですね。
やるからにはお客さんをたくさん呼びたい。それも関係者や知り合いだけじゃなくて、自主映画を観たことのない一般の人に来てもらいたい。そうでないと続かないと思いました。
自主映画ってそもそも"暗い"ってイメージがあるでしょう?
で、参考のために他の自主映画上映会に行ってみたら、これがイメージ以上に暗い(笑)。作品が暗いのはまだいいにしても、司会も受付も舞台挨拶ももう何もかも真っ暗。ぼそぼそしゃべってね。なんの飾りもない会議室みたいなところでやって。こんなのお客さん絶対来ないよー、と思いました。
だから、その真逆でやろうと。司会も面白くて、映画上映以外でもロビーで展示とか食べ物振る舞ったりとか色々企画をやろうと。映画も楽しい映画をなるべく集めようと。とにかく楽しいイベントにしようというのがコンセプトです。
―――前回は、400人近くの来場者があったようですね。
豊田という場所で400人というのが多いのか少ないのかというのはなんとも判断が難しいところですが、とりあえずは会場をいっぱいにしたいと思ってます。産業文化センターのキャパは約240ですから。
―――お客さんがたくさん来る秘訣は?
秘訣なんかありませんよ、とにかく楽しいイベントにすることとそれから宣伝はがんばってやってますね。チラシを作って市内外に配布しています。店舗などにチラシを置いてもらうのはメンバーが1ヶ所ずつ回ってお願いしてます。人海戦術ですね。公共施設等に郵送したのも含めて約7,000枚を配布してます。
あとは、地元メディア、雑誌やCATVとかに売り込んで掲載・出演させてもらってます。
地元CATVひまわりネットワークで『小坂本町一丁目テレビ』という番組もレギュラーで製作しているんですが、これも広報宣伝活動の1つです。
―――来場される一般のお客さんはどれくらいですか?
前回のアンケートでは、70%以上が関係者の友人知人でない一般のお客さんでした。自主映画の上映会としては、ここまで一般率が高い映画祭はそんなにないと思ってます。自慢です(笑)。
だから、アンケートも厳しいことが書かれますよ。「つまんない」の一言だったり。でも、それくらい厳しい感想に触れないといいものは作れません。逆に「自主映画がこんなに面白いなんて!」という純粋な驚きの感想ももらえたりしますしね。
―――チラシは結構立派ですね。
一番お金かけてますね。そういうのって重要なんです、チラシが貧相だと映画祭自体も貧相だと思われちゃいますから。
デザインは、今までも前途有望な地元のデザイナーにノーギャランティでやってもらってます。今回は、豊田市出身で東京で活躍中の河村まこと君がやってくれました。三河地区で配布されているフリーペーパーCOAの表紙をずうーっと描いてる人です。デザインについては、自由に好きなようにやってもらってます。
―――今回から全国応募作も上映されるとのことですが。
前回、県外からの招待作を上映したんですが評判がよくて。監督にも来てもらって、地元製作者との交流もあってとても刺激になった。招待した監督からも「いい映画祭だ」と言われて調子に乗りまして(笑)、じゃあ、全国から募集しちゃおうということになりました。
最初なのでそんなに応募作ないかな、と思ってましたが、ふたを開けたら30本近い応募があって、それも力作ばかりで。時間の都合で全部が上映できなくて残念です。
ただ、この映画祭はコンテストではないので、上映作が入選とかその中からグランプリを決めるということはありません。
上映できない作品は、CATV番組『小坂本町一丁目テレビ』で放送させてもらおうと思ってます。
―――選考はどのようにしたのですか?
M.I.F.のメンバーで応募全作品を見て、参考の評価点をつけて、点が高い方の作品から上映時間や、他作品とのジャンルのバランスやなんやかやを考慮して選ばさせてもらいました。
それと、"交流"が目的の1つですので、監督が映画祭に来てくれるかどうかというのも重視しました。
最終決定の時は喧々諤々でしたね。我々も映画作ってますから、コンテストじゃないにしても応募して上映作から漏れることのつらさってのはよく知ってますから。ちょっとした運や審査員の好みで左右されることは経験上わかってはいますが、やっぱり漏れるとへこみますからねぇ。だから、非常に重い責任を感じました。
応募いただいたことへの心ばかりのお礼として、全応募者にメンバーの感想を送らせてもらいました。
―――全国募集の他にも上映枠が2つありますが。
地元枠と招待枠ですね。地元枠は、以前より映画祭で上映している三河在住の監督作です。地元が舞台の作品上映というコンセプトはそのままありますので。
招待作品は、有名映画祭での受賞作を招待しました。やはり、賞を取った作品というのはそれだけのものがあります。全国のトップレベルの作品がどういうものかというのも観てもらいたいですね。
―――それでは、上映作を紹介してください。
『黄色い鳥と緑の犬』
募集枠ですが、地元豊田高専演劇部製作の映画です。演劇部と言いながら映画を作ってるそうで、部長でもある川合監督がなかなかいいシナリオ書くんですよね。高校が舞台のさわやかな作品です。
『西からやってきた恋』
前回上映した『恋する武道』の植田監督の"恋シリーズ"2作目ですね。この作品は、もうおバカ映画の真髄というか、楽しんで作りたい映画を作りたいままにやってるという、微笑ましさいっぱいの映画です。
『GRIM AGE』
愛工大の漫画動画研究会のOBの方たちの作品です。これも、楽しい映画ですね。主演・脚本の高津さんは、交流会にもよく参加してくれるんですが、映画そのままの酒乱です(笑)。
『あかね雲―初恋―』
埼玉で開催されたスキップシティ国際Dシネマ映画祭2007の奨励賞受賞作で招待作品です。CGアニメーション作品。メンバーでもあり上映作『昨日の町で、』の監督でもある岩松さんもこの映画祭で入選して、意気投合したとのことで招待をオファーしました。
『FLYINGBIRD』
今回の映画祭でもっとも長い60分を超える作品です。応募作なんですが、長さと暴力的描写があるということで、上映するかしないかについてはかなり議論しました。でも、そのクオリティの高さ、様々な社会問題を取り込んだ意欲に惚れまして。*内容に沿った必然的な暴力描写ですが、お子さんの鑑賞は保護者の方で判断してもらえればと思います。
『笑ひ教』
山形国際映画祭の山形市長賞受賞作です。葉子監督は、河瀬直美監督の映画にも出演している女優さんで、今回が初監督。この映画には『殯の森』主演の尾真千子さんや山口美也子さん、光石研さんが出演してるんですよ。
『こうかい』
地元末野原ムービークラブ製作の作品です。ちょびっとアクション映画のようです。
『とべないトリ』
応募作ですが、監督は地元豊田の方です。CGアニメーション作品。
全国募集枠でも地元の方の作品を何本か上映しますが、たまたまの偶然です。選考時にそのことは考慮してないので。
『昨日の町で、』
前回上映『IMOMUSHI』の岩松顯監督の新作。地元枠ですが、既に色々な映画祭で入選している作品です。新・北京国際映画祭でも上映されるそうです。
『SECRET PLAN』
心温まるストーリーの感動作ですね。泣けちゃいます。それに、とにかくクオリティが高いです。
『それ行け!ドラマチック放送局』
この映画祭1回目から欠かさず作品を出品してくれている刈谷のエンターテイメント王加藤行延監督作。刈谷を始めとする碧海地区で、キャストスタッフを募集して作った市民映画とのことです。
『レッツゴー番長デッドオアアライブ完全版』
スキップシティ国際Dシネマ映画祭2007のグランプリ受賞作品。手書きタッチが印象的なアニメーション作品です。番長の果し合いの場に宇宙人が来襲してきて・・・、監督はゾンビが大好きで・・・、どんな映画かわからないでしょ、面白いから観てみてください。
そして最後は我々M.I.F.製作の『カササギの惑星』です。
主催者ってことでトリにさせてもらいました。伴野悠吏監督は、映画を作ってみたいと交流会に参加して、M.I.F.製作の前作『箱』で助監督を務めて、今回の監督抜擢となりました。初監督作です。そう言えばこのサイト作ってるのも伴野監督です。「兄弟」「七夕」「プラネタリウム」がキーワード。
―――ありがとうございました。バリエーションがありますね。
本当にそうですね。技術的につたなくても情熱のある作品から、とにかくクオリティの高い作品、シリアスからコメディからアニメーションからおバカ映画まで、自主映画の幅の広さを感じてもらえるラインナップだと思います。でも、どの作品も監督はじめ製作者が手塩にかけて産み落とした愛おしい作品であることに違いはありません。製作者の思いをダイレクトに感じることが出来るのが自主映画を観る醍醐味ですから。
―――監督たちが映画祭に来られるのですか?
全国募集作、招待作も含めてほとんどの作品の監督さんが当日来場します。
舞台あいさつだけじゃなくて、休憩時間にサブ会場で監督たちのトークセッションをやったり、お客さんと自由に話してもらえるような場(交流サロン)を作ろうと思ってます。
なんてったって"交流"がテーマですから。
―――今回からサブ会場もあるんですね。
はい、今までロビーでやっていた色々な企画をサブ会場に移しました。
あそこロビーが狭いもんですから。同じ豊田産業文化センター内の4Fにある視聴覚室です。メイン会場(小ホール)の隣というわけではないんですが、休憩時間は30分とたっぷり取ってありますので、是非足を運んでください。
内容は、監督トークセッションや、監督との交流サロン、お茶コーナーや腹ごしらえコーナー、展示やアトラクションなど色んなコーナーを設けています。とにかく楽しいイベントにしたい、という部分がここに出ています。
―――映画祭終了後にも交流の場があるそうですね。
そうなんです、映画祭終了後の夜には、場所を移してこざほんクラブ交流会をやります。
要は飲み会なんですが、打ち上げではなくて、お客さんでも誰でも参加できる交流会です。前回もやったんですが60人くらい集まりまして、映画祭以上に盛り上がっちゃいましたね。
今回もみなさん交流会にもどんどん参加してください。できれば事前に連絡してもらえるとありがたいですが、当日飛び入りでも大歓迎です。
詳しくはM.I.F.のサイトで(一月下旬頃)。
―――今後は映画祭をどのようにしていきたいとお考えですか?
M.I.F.では、映画製作と映画祭運営を活動の両軸と位置づけています。どちらかが優先するとか重点があるいうことでなく、切り離せないものとしてやっていきたい。
ともすると自主映画作家・団体は、映画を作ることには一生懸命でも、それを上映することをあまり考えてない場合が多い。だからこれからも上映の場は作っていきたいし、提供していきたいですね。映画は観られてなんぼですし、観た人に誉められるとやっぱりうれしいですし。
―――お客さんにもたくさん来てもらって。
そうですね、だから"地域密着"というのも活動・映画祭の大きなテーマです。観に来てくれるのは地元の人ですから。大げさに言えば、豊田・三河で自主映画が1つの文化、ムーブメントになったらいいなと思ってます。
豊田・三河で自主映画を作る人が増えて、観る人も増えて、認知度も結構あってという状態になるといいなと。それを全国に発信して全国的にも知名度が上がって、いい映画が集まってくるといいなと。その中心にこの映画祭がなればいいなと思ってます。
―――継続していくには資金をどうするかというのも重要ですが。
そのとおりです。今回は、(財)あすてさんからの補助金と入場料、そして企業協賛金で事業費を賄う予定です。
でも、いつまでも補助金はもらえないでしょうから、ゆくゆくは入場料DVD販売等の直接収入と、協賛金収入を半々くらいで採算が採れるようにしたい。さらに映画製作費にもまわしたい。
―――協賛企業のCMも製作しているそうですが。
映像製作をしてますので、協賛のお礼というか特典としてCMを作って、映画祭やサイトで上映します。
チラシやパンフレットに広告・協賛枠を設けてってのはよくありますけど、どうしてもお付き合い的なものが多い。多少は協賛のメリット感もないといけないと思って。そうしないとなかなか継続して協賛してもらえませんし、申し訳ないですし。
ただ、今回15社も協賛いただいたので、CM製作が結構大変で・・・。うれしい悲鳴です。「CM作ってみようかな」って言ってくれるメンバーで分担してなんとか作ってます。メンバーのみんなには本当にがんばってもらってますね。
―――協賛企業のCMも製作しているそうですが。
そのとおりです。地元で映画を作る/映画祭をやる=お客さんが観に来る=協賛企業も増える=映画を作りたい人も増える=応援してくれる人も増える=そのお金と人材で映画を作る/映画祭をやる、という資金と人のサイクルを作りたい。
そういうサイクルを、全国のクリエーター達と交流しながら、豊田・三河で作れたらいいなと思ってます。
(写真はGOKANのCM撮影風景)
―――夢は大きいですね。
まあ、でも、文化の定着なんてのは結果であってね、要は、映画を作ってて楽しいとか、映画祭にお客さんが来てくれてうれしいとか、作った映画にたくさんの人が共感してくれて次も作ろうとかそういうことが原動力だと思ってます。
メンバーはもちろん、映画製作や映画祭運営に関係してくれる人たちや、観に来てくれる人、応援してくれる人も含めて、楽しいうれしい面白いってのを共有できたらいいなと。
前回の映画祭アンケートで何人かのお客さんから「この映画祭に参加して楽しかった」という感想をもらったんです。お客さんも"参加してる"って思ってくれてるのはとてもうれしいですね。
「参加者の充実感が文化を作る」って補助金のプレゼンで苦し紛れに言ったんですが、これ、我ながらいいフレーズだな、と思ってます(笑)。